『経済リポート』とは、広島県東部の雑誌で、政治や経済といった事柄の他、地元福山市のイベント情報などさまざまな情報を掲載されている雑誌です。
経済リポート
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日頃は悠揚迫らぬお師匠すら気ぜわしい
で、12月を師走と呼ぶようだが
当節、先生は年中いそがしい
これでは長閑な子どもを育むのは難しかろう
書の妙味は崩し加減にある
空海が朋友、最澄に宛てた手紙である風信
帖の「信」の字に接するたび
神の手蹟としか思えないほどの崩しの妙に
いつも戦慄を憶える
今生で、あの境地に寸尺なりとも近づくこ
とができようか・・・・・・・。
甚だ、心許ない
1本の筆に馴染むまで、およそ10年を要する
使いこなした筆先を墨汁に浸した刹那
羊の毛のしなやかな感覚が五体を駆け巡る
創意の生まれる瞬間である
七草図といえば若沖-とする人は少なかろう
その豪奢な様は琳派の枠を逸脱し、観る者を圧倒する
しかし、春草や青邨の描く楚々とした桔梗の一輪は
高貴さにおいて若沖を凌ぐ
ニイニイ蝉が減り続けているという
確かに近年は油蝉や熊蝉の大音声ばかりで
否応もなく暑苦しさが募る
同様に、百日紅や來竹桃の紅も鬱陶しい
ただ、木槿の白のみが近づく秋を感じさせてくれる
この数十年で、夕立が激減したという。
確かに、一天にわかにかき曇り、といったシーンが少なくなった。
その昔の驟雨が恋しい。
激しい雨がうそのように去った後、濃厚な土の香を伴って訪れる一陣の風は、
魂を洗われるほどに涼やかだった。
芍薬が好きになったのは、いつからか
ある時、日陰の一隅に咲く楚々とした姿に魅了された
すらりと美しく、庭の全体に呑気を放っている
人生は颯爽とありたい そう諭されたような気がした
芽生えた命が急速に成長するのが、この季節である
深々とした森に分け入り、若葉の薫風に洗われながら
降り注いでくるエネルギーを受けていると
新たな気付きが生まれ
創作意欲がおもむろに立ち上がってくる
少年時代は芦田川が遊び場だった
五感で受けた記憶は、今も瑞々しい
春−川のあちこちに浮かぶ砂州が濃淡の緑で彩られる
その朧な景色は、一幅の水墨画だった
河口坂は私たちの暮らしを豊かにしたが、失ったものも大きい
書道は人づくりの場である。
挨拶、礼節といった人としての基本が
豊かな心を育み、上達や個性の発露を促し
ひいては夢と希望の実現を可能たらしめる。
この春,私の許から巣立ってゆく俊秀たちに
それを餞(はなむけ)としたい
3歳から書道を始め、半世紀近くになるが、
どこまで極めたか、と問われると、はなはだ心もとない。
進めば進むほど、その奥深さに慄然とするばかりである。
歩んできた道を振り返ると、そこはただ茫洋として
夢まぼろしの如く、というほかない。
『稽古とは一より習い十を知り、十より帰る元のその一』
千利休の言葉であるが、書も同様で、お浚いに始まり、お浚いに終わる。
寒の早朝、立ち籠める墨の香の中で紙に向かう。
穂先を虚空の一点にかざした瞬間の凛とした気分が好きである。
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